娘のコーディネート
コットンのストールが、好き。だって、屋内に入っても、ずっと巻いておけるでしょ。私にとってのストールは、巻くタイプのネックレスのような、そんな感じ。
近年は、特にファッションに取り入れている。理由は、娘が大きくなったから。もうずいぶんとしっかりしてきて、「抱っこ」とも言わなくなった。抱き上げる時にかがむと、ストールが地面にたれさがるのが嫌で、千尋が生まれてからはほとんどしていなかったのだ。
「ママ、その青いワンピースだったら、この黄色のストールの方がいいよ」
最近は、私の服装にもいろいろとアドバイスをくれるようになった。
「こっちの水色の方が合うと思うんだけど」
「えー、絶対に黄色がいい!」
千尋はそう言って、自分が巻くわけでもないのにマスタード色のストールをはなさない。
「ワンピースとストールを青系でそろえて、ワントーンコーデってのをしたいのよ」
千尋はまだ4歳なので、私の言っていることがわからない様子だ。でも青に黄色を合わせるなんて、私には派手過ぎる。少なくとも水色を選んでおけば、無難で落ち着いたコーディネートになるはずだ。
「ママ、好きって言ってたじゃない」
「何が?」
「行きたいって、昨日言ってた!」
「どこへ?」
よくしゃべってくれるようになったのはいいけれど、母親なのに娘の言いたいことがわからないことが、時々ある。
「忘れちゃったけど、昨日、テレビで見たやつ!」
何のことだろう。昨日、テレビで何か……、
「もしかして、スウェーデンのこと?」
昨晩、北欧特集をテレビで見たのだ。
「そう、その国!」
ムーミンが出てきたりして、千尋も興味津々になっていた。
「でも、スウェーデンとストールに何の関係が……あっ!」
思い出した。スウェーデンの国旗は、青地に黄色の十字が入ってるんだ。
「よく覚えてたねぇ」
「黄色のストールにすれば、スウェーデンになれるよ!」
さっきまでありえないと思っていたマスタードのストールを、促されるままに巻いてみる。
「ほらね。いい感じ」
千尋が姿見の前に立つ私の後ろから、ひょっこり顔を出して得意げな声をあげた。
「確かに、悪くないかも……」
やっぱり落ち着きには欠けるけれど、だんだんとそんな気がしてきた。
「ママ、急がなきゃ。おばあちゃん、待ってるよ」
今日は、母と3人で食事に行くのだ。めいっぱいオシャレして集まるのが、我が家のルールになっている。
気が付くと、そのまま外に出ていた。
「ママ、かわいい。似合ってる!」
私らしくないコーディネートではあるけれど、今日はこれでいいか。私の専属コーディネーターのお墨付きだしね。